任意整理と個人再生と自己破産、それぞれのメリットとデメリットは?
「借金返済で生活が厳しい・・・」
「もう返済する余裕がない・・・」
「督促の電話が怖い・・・」
「多重債務に陥っている。この辛さは言葉ではもう表現できない・・・」
「なんとか楽になれる方法はないものか・・・」
・・・など、借金に関する悩みはとても深刻ですよね。わかります。私自身も経験しましたから。
でも、その借金が減額できるとしたら、知りたいと思いませんか?
「そんなことできるの!?」「怪しい・・・詐欺じゃないの?」と疑ってしまう気持ちもわかります。でも決して怪しいものでも詐欺でもありません。これはれっきとした「法律に基づいた解決方法」なんです。
それは、借金を減額できる「債務整理」という制度です。それはもちろん合法的に借金が減額できるという手続ですから心配は無用。弁護士や司法書士といった専門家に依頼して手続きをすれば、借金が減るかもしれません。
この記事では、借金を減らす方法や、借金減額を法的に解決できる債務整理についてメリットデメリットを踏まえて解説しています。実際、私自身もその手続きで借金を減額してもらいました。ぜひ参考にしてみてください。
借金を減額する方法は4つ!
私は現在、いわゆる「街の法律家」とも呼ばれている行政書士という仕事をしていますが、以前、「化学物質過敏症」という病気になってしまい仕事ができなくなりました。それだけでなく、その病気のために何度も引っ越しをしなければならなくなり、貯金を使い果たしてしまいました。ついには借金地獄に・・・
借金返済の督促電話が毎日いろんなところから鳴っていました。でも、私はなんとか借金を返済しようといくつもの仕事を掛け持ちしていました。でもその体が悲鳴をあげてしまいました。
それでやむなく借金減額の手続きを利用しました。ですので、借金のためにつらい状況に置かれている方の気持ちがよくわかります。でも安心してください。借金地獄から逃れることはできます。法的な手段をよく知り、デメリットやリスクを確認した上でその手続きを行えば、借金地獄から逃れることができるんです。
また以前のような家族の平穏な生活を取り戻ることができます。
まずは、借金を減らす4つの方法を順番に説明していきます。これから説明する4つの方法はどれも合法的に借金を減額できる方法です。
過払い金請求
過払い金請求は、一口でいうと「払い過ぎていた利息分を取り戻す手続き」のことです。
具体的には、クレジットカードやローン、住宅ローンなどの契約において、利息や手数料が不当に高額に設定されていた場合や、法律で定められた範囲を超えていた場合に、その過払い分を請求することができます。
例えば、銀行や信用金庫から借りたお金の返済額が、実際に借りた金額よりも多くなっている場合、その差額が過払い金となります。また、クレジットカードの利用に関連して支払った金額が、実際に利用した額よりも多い場合も過払い金となります。
過払い金請求の手続きは、契約内容を確認し、過払い金が発生していることを証明する必要があります。その後、金融機関に対して過払い金を請求する手続きを行います。過払い金が認められれば、過払った分が返還されることになります。
過払い金請求は、消費者保護の観点から重要であり、不当に支払った金額を取り戻すことで、消費者の権利を守ることができます。
ただし、この手続きは一般の人が行おうとしても対応してもらえないことがほとんど。弁護士や司法書士に相談することで過払い金請求の方法や手続きについて詳細を知ることができます。
任意整理
任意整理とは、「借金問題に直面した際に貸金業者と交渉を行い、利息や遅延損害金の一部を免除してもらう手続き」です。
例えば、クレジットカードの借金があり、返済が困難になってしまった場合には、任意整理を選択することができます。利息や遅延損害金は、滞納期間や金額によって異なるため、具体的な金額については直接貸金業者との交渉によって決定されます。
残った借金は、分割払いによって3年から5年の期間で返済することができます。
任意整理のメリットとデメリットを表にしてみました。
メリット | デメリット |
元金のみの返済:将来利息や遅延損害金がカットされ、元金のみの返済が可能になります。毎月の返済額が減り、借金を着実に減らすことができます。 | ブラックリストに載る:債権者との和解が成立したときまたはその後に完済してから5年間は信用情報に事故情報が残り、クレジットカードやローンの利用ができなくなります。 |
過払い金の返還:過払い金が発生していれば、元金も減らせる場合があります。 | 減額率が低い場合がある:債権者との交渉によって減額率が決まりますが、元金の減額が難しい場合もあります。 |
督促や取り立ての停止:任意整理手続き中は、債権者からの督促や取り立てが一時的に止まります。 | 根本的な借金問題の解決にはならない:任意整理は返済方法を変更する手続きであり、借金そのものを解決するわけではありません。 |
借金完済までの目処が立つ:分割払いで返済するため、借金完済までの目処が立てられます。 | |
特定の借入先を選択可能:任意整理したい借入先を選べる特徴があります。例えば、一部の借金を減額したい場合、他の借金はそのまま返済することもできます。 |
任意整理は、返済が行き詰まった借金について、債権者と交渉して返済計画を変更する手続きです。任意整理の手続き方法と和解完了までの流れは下記の通りです。
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1弁護士・司法書士に相談・依頼
まずは信頼できる弁護士または司法書士に相談しましょう。借金の状況や収入などをヒアリングし、適切なアドバイスを受けます。弁護士との契約を結び、着手金を支払います。
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2受任通知で返済がストップ
弁護士が債権者に「受任通知」という書類を送ります。この通知により借金の返済が一時的にストップしますし、督促もピタリと止まります。
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3利息の引き直し計算
弁護士は債権者から送られた取引履歴をもとに、利息制限法に基づいて引き直し計算を行います。過払い金があれば借金返済に充てられます。
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4債権者との和解交渉
弁護士が債権者と交渉し、借金の減額や返済スケジュールの再設定を目指します。和解案が成立すれば、その後の支払額が決まります。
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5交渉成立後の返済
和解が成立したら、新たな返済計画に基づいて借金の返済を開始します。完済までの期間は3年から5年程度です。
任意整理は借金問題の解決に向けた有効な手段ですが、専門家のアドバイスを受けながら進めることをおすすめします。
個人再生
個人再生は、「裁判所の認可を得て正当に借金を減額してもらう債務整理」の一つです。手続きは裁判所の認可を得る必要があるため、任意整理より手間がかかりますが、持ち家を手放すことなく借金の減額ができるというメリットがあります。
以下に個人再生の特徴を詳しく説明しますね。
減額できる借金額
個人再生では、借金額が最低100万円以上5,000万円以下で、3~5年で返済できる見込みがあることが利用の条件です。借金総額(住宅ローンを除く)がこの範囲内であれば、個人再生を検討できます。
ただし、借金総額が100万円未満の場合は減額できません。
減額率
個人再生を行うと、借金総額の5分の1(80%減額)から10分の1(90%減額)程度に減額できる可能性があります。具体的な減額額は、債務額や財産の清算価値などを考慮して計算されます。
分割返済
減額した金額は、原則として3年から最長5年で分割返済することになります。
これは、「月々いくらまでなら払えるか?」ということを弁護士または司法書士に尋ねられますので、できれば5年程で支払いを完了できるような額を提示して交渉してもらうことになります。
持ち家を残せる
個人再生では、住宅ローン特則を利用することで、持ち家を残すことができます。住宅ローン特則は、住宅ローンの債権者を整理の対象から外してもらう特別措置です。
車を残せる可能性
車を所有している場合でも、自動車ローンを完済していれば手放すことなく残すことができます。
個人再生にはデメリットもあります。例えば、信用情報に事故情報が登録される、クレジットカードが使えなくなる、新たな借入が一定期間できなくなるなどが挙げられます。個人再生を検討されている方は、弁護士に相談することをおすすめします。
任意整理と個人再生の違いは?
任意整理と個人再生の違いを一覧にしてみました。
任意整理 | 個人再生 | |
---|---|---|
手続きの方法 | 裁判所を介さずに債権者と直接交渉 | 裁判所での手続き |
返済額・返済方法の取り決め | 債権者と合意に基づく | 裁判所の決定による |
強制力 | なし | 強制的に借金を減額可能 |
条件 | 安定した収入と返済意思 | 借金総額が5000万円以下であること |
借金の減額割合 | 利息のカットのみ | 利息と元金のカット |
ブラックリスト登録期間 | 和解成立後または完済後の5年 | 認可確定後の10年間 |
官報掲載 | なし | 氏名や住所が官報に掲載 |
保証人への影響 | 基本的になし | 保証人が返済請求を受ける可能性 |
個人再生のデメリットに「氏名や住所が官報に掲載」されるという点を挙げましたが、正直なところ一般の人は官報を見ることはほとんどないのであまり問題にはならないかと思います。
むしろそれ以上に影響が大きいのが、「保証人が返済請求を受ける可能性がある」という点でしょう。これは要注意です。元金カットがあるということは、そういうリスクも十分考えられますよね。
自己破産
最後の手段は「自己破産」です。自己破産すれば借金が全部チャラになると思っている方がいますが、実はそうではありません。
自己破産手続きをして「免責(めんせき)」が得られたら借金はなくなります。
自己破産のメリットとデメリットをまとめました。
自己破産で借金減額をするメリット
- 借金がなくなるので、精神的な負担はかなり軽減される。
- 新たな人生をスタートできる
- 預金や貯金は、原則として価値が20万円を超えるものは処分対象となるが、破産者名義の全ての口座の預金・貯金額の合計が20万円未満であれば、自由財産として扱われ、破産をしても持っていることが許される。
- 現金99万円まで、また最低限の生活必需品を残すことは可能(現金99万円を超える分は「破産財団」に組み入れられる)。
- 生活保護受給者で、法テラスの民事法律扶助制度が利用できれば、専門家の報酬支払が免除される
自己破産で借金減額をするデメリット
- 車、保険、貯蓄など没収される(合計20万円未満は所有可能)。
- 新たにクレジットカードを持ったり、新たなローンを組むことはできない。
- 既存のクレジットカードも強制解約され、その家族カードも全て解約となる。
- ブラックリストに5~10年間掲載される。
具体的には、株式会社日本信用情報機構(JICC)は、消費者金融系の会社または信販会社が加盟しており、5年間ブラックリストに載ったままとなる。
株式会社シー・アイ・シー(CIC): クレジット会社または信販会社が加盟しており、同様に5年間ブラックリストに載ったままとなる。
全国銀行個人信用情報センター(KSC): 銀行、信用金庫、JAなど銀行関係企業が加盟しており、こちらは10年間ブラックリストに載ったままとなる。 - 官報に氏名、住所など掲載される。
- 保証人に返済義務が生じる。
- 弁護士費用が高い(相場20~50万円)
- 全ての借金が対象とはならない(税金や罰金、養育費などは減額対象外)。
自己破産をして免責が得られると確かに借金はなくなりますが、個人再生と同様に連帯保証人がいる場合には借金の取り立てが連帯保証人に行くので、こちらも注意が必要です。
任意整理と個人再生、自己破産のどれを選んだら良いかの目安についてはこちらの記事をご覧ください。
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まとめ
これらの情報をもとに、ご自身の場合には何が最善なのかをよく検討する必要があると言えるでしょう。
弁護士と司法書士のどちらに依頼したら良いのか?については下記の記事もご覧ください。
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